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樹木医学会の紹介

会長挨拶

樹木医学会のさらなる発展に向けて

樹木医学会会長 佐橋 憲生(森林総合研究所)

 樹木医学会がその前身である「樹木医学研究会」として設立されたのが1995 年ですので,再来年(2025 年)には30 周年を迎えることになります.現在の会員数は六百数十名で,以前に比べれば増加していますし,学会誌である「樹木医学研究」を年4 回発行するなど,体制が整備されつつあります.しかしながら,今後さらに発展していくためには,取り組まなければならない課題も残されているように思われます.

 診断・治療などの技術の向上や基礎学問としての樹木医学の発展のためには,現場で活躍されている樹木医などの技術者と大学や研究機関に所属する研究者が相互に情報を交換したり,協力したりすることが必要不可欠です.研究者は現場で活躍する樹木医の声を聞くことで,面白い研究に結びつきそうなアイデアを得ることができますし,現場での問題解決に必要な応用研究に着手することが可能となります.また,樹木医は,最新の研究成果を知り,それを現場で活かすことができるほか,自分が行っている治療法等の科学的な根拠や妥当性を知ることができます.

 私は大学や研究機関の研究者と現場で活躍する樹木医などの技術者を結びつける役割を担うのが,樹木医学会とその学会誌である「樹木医学研究」であると考えています.毎年秋に開かれる大会は,樹木医などの技術者と大学や研究所などで働く研究者が一堂に会するよい機会であり,様々な情報を収集したり,交換したりすることができるほか,これまで知らなかった人と出会える機会を提供します.また,樹木医学研究に掲載される論文や基礎講座を読むことで,樹木医は最新の研究成果を知ることができますし,研究者は臨症事例などを読むことで,樹木医などの活動の一端や現場での問題点等を把握することができます.

 このように,樹木医学会とその学会誌である樹木医学研究が,樹木医(技術者)と研究者を繋ぐ橋渡しの役割を担っていることは事実です.しかし,現状ではまだまだ不十分な点があると考えています. 重要なこととして,これまで以上に会員数を増やす必要があります.特に新しく樹木医になられた方に,樹木医学会に入会してもらう必要があります.毎年,100 名程度の方が新たに樹木医として認定されますが,樹木医学会に入会される方はそれほど多くはありません.樹木医学会としては,一次試験を突破された方の研修時に樹木医学研究を配布したり,研修の講師の方々に樹木医学会の魅力や利点を伝えてもらい,樹木医になられた際に入会していただくようにお願いしていますが,これだけでは不十分のようです.樹木医など,技術者を対象とした現地検討会や技術研修などのワークショップを今まで以上に充実させることで,樹木医学会に入会するメリットを伝えていく必要があると考えています.

 また,学生会員がそれほど多くないことも,大きな問題であると考えます.森林学会や植物病理学会など関連学会に参加してみると,多くの学生,大学院生が積極的に研究発表を行っており,非常に活気があります.しかし,現状を見てみると,樹木医学会に参加されている学生は非常に少なく,主に森林保護(森林病理学,昆虫学など)を専攻されている方に限定されているように思われます.樹木医学はいわゆる総合科学で,様々な学問分野の知見や技術を統合して,樹木(森林)の診断や治療,予防法を開発し,その保全を図ることを目的としています.従って,森林病理学,昆虫学はもとより樹木生理学,造林学,土壌学,造園学など様々な分野の学生にも入会していただけるようにしていく必要があると思います.また,樹木医学に関連する分野の先生方や樹木医補資格養成機関として登録されている大学等に,樹木医学会を知っていただくような活動も必要でしょう.

 新たに樹木医になられた方や樹木医学に関連する分野の学生・大学院生の方に樹木医学に興味を持っていただくためには,樹木医学研究をさらに充実させていくことも非常に重要です.最近では投稿原稿も増加しつつあり,以前と比べて原著論文,短報,臨症事例の掲載数も伸びてきています.樹木医学研究は学会誌であり,研究論文の掲載はもっとも重要な目的の一つです.本誌に樹木医学に関連する様々な分野からの論文が多数掲載されること,また,重要な研究成果が掲載されることは会員の増加にもつながると思う次第です.樹木医学に関連する技術者や研究者にとって必読の学会誌になるように,工夫を重ねていくことが必要です.

 近年,地球規模で温暖化が進行し,それに伴う異常気象(局地的な豪雨や強風など)による災害が増加しつつあります.都市域では様々な原因で緑化樹や街路樹の異常や衰退が認められるほか,樹木の倒伏や幹折れなども増加傾向にあります.また,古くから親しまれてきたいわゆる「里山」の荒廃も各地で問題となっているほか,例えばクビアカツヤカミキリやウメ輪紋ウイルスなど,新たに侵入した生物による被害も多発し,大きな問題となりつつあります.従って,今後,樹木医に求められる知識や技術は多岐に亘り,基礎学問としての樹木医学の重要性はますます高くなると考えます.このような状況において,樹木医学会が社会に果たす役割はこれまで以上に大きくなると思われ,その期待に応えられる実力を備えた学会になる必要があります.会員の皆様におかれましても,樹木医学会のさらなる活性化,充実に向けて,様々なご意見やご協力を頂ければ幸いです.

(2024年1月31日,樹木医学研究 第28巻1号)

地平線に並ぶ樹木