樹木医学会第21回大会11月13日15:05~15:35
講師:福田健二東京大学農学生命学研究科
樹木医学会第21 回大会では,速報や論文の書き方についてセミナーを開催します. 本学会の大会で発表された口頭およびポスター発表の内容は, 原則として「樹木医学研究」誌に「速報」として掲載します.しかし書き方がわからない,修正意見への対応方法がわかりにくいという意見があり,途中で取り下げられる例も見受けられます. そこで第21 回大会の機会に,書き方講座を開催することにしました.科学的な報告文には基本的なルールがあります.たとえば「方法と結果を混ぜて記述しない」のような形式に関する事柄や,「データに基づいた解釈であること」のような内容に関するルールです.すでに先行的な報告があれば,その研究報告を引用します.形式については多少変更できますが,まずこのような「お作法」に従って書くことから始まります.講座では以下のような項目を説明します.
大会会場での口頭・ポスター発表には事前審査はありませんので,間違った解釈をしていても公表できてしまいます.「速報」は論文としての審査はしませんが,学会誌に掲載された文章は広く読まれることから,読者に誤解を与えないかと言う観点、でチェックを行います.発表内容を無条件に掲載するのではなく,必要に応じて原稿に修正意見をつけて著者に返します.修正が必要になる理由としては, ①読んでわかりにくい文章である,②科学報告としての形式が整っていない,③方法やデータの記述に問題がある(グラフや統計),④解釈に論理的でない部分がある(憶測が多い) , などが挙げられます.良い研究であっても,記述上の問題で多数の修正意見が返ってくることがあります.この段階で,「成果が否定された」ととらえて投稿をあきらめるのは大変残念です.修正できる部分は修正し,どうしても納得できない場合や指示内容が理解できない場合は,その理由を記して編集部に提出します.そこで再度修正の意見が来る場合と,主張が了解される場合があります.「速報」の査読は原則として1回で,厳しい修正意見がついている原稿でも,指摘に対応して修正原稿を提出すればほとんどの場合,掲載されます. 一般に,研究論文の投稿では,書き直しても5~6回の修正意見が来ることはよくあり,あきらめないことが肝要です.
樹木医学研究に掲載される報告にはいくつかのタイプがありますが,すべて編集委員を含む審査者による査読(審査)を行います.「論文」 「短報」は新規性のある研究であるか,科学的に正確であるかどうかなどの観点から審査され,速報の場合よりも厳密に判断されます.「臨症事例」では,事実の客観的な記載が重要になります.是非本セミナーに参加し投稿の参考にしてください.